矯正治療の痛みが不安な方へ|上の歯と下の歯で違いはある?

矯正治療を検討されている方から寄せられるご相談の中で、特に多いお悩み?の一つが治療中の痛みに関するものです。「矯正は強い痛みが出ると聞いて不安がある」「上下の歯で感じ方に差はあるのか」といった疑問を持たれる方は少なくありません。そこで今回は、矯正治療に伴う痛みについて、上下の違いが生じやすい理由や装置ごとの痛みの特徴を解説します。
上下で痛みの差は生じるのか?
結論として、感じ方には個人差があるものの、一般的には上顎よりも下顎の方が違和感や痛みを覚えやすい傾向があるとされています。臨床現場での聞き取りや複数の報告においても、上下を比較した場合、下顎側で不快感を訴えるケースがやや多く見られます。この差は主観的な印象だけでなく、口腔内の構造や神経の分布といった解剖学的要因が関係しています。
下顎の方が痛みを
感じやすいとされる理由
下顎で違和感が出やすい背景には、主に次のような要素があります。
- 骨の性質による影響
歯が移動する際には、歯を支える骨が吸収と再生を繰り返す「骨代謝」の働きが関与します。上顎は複数の骨が組み合わさった構造で、比較的変化に対応しやすい性質を持っています。一方、下顎は単一の骨で構成されており、密度が高く硬いという特徴があります。このため、歯が動く過程で歯根膜に加わる刺激が強くなりやすく、圧迫感や痛みとして認識される場合があります。 - 感覚神経の伝わりやすさ
下顎周囲には感覚神経が多く分布しており、矯正力による刺激が知覚として伝わりやすい傾向があります。その結果、同程度の力が加わっていても、下の歯の方が強い違和感を覚えることが多いです。 - 装置と粘膜の位置関係
ワイヤー矯正では、装置の位置によって唇や舌と接触しやすくなることがあります。特に下顎では、会話や食事といった日常動作の中で粘膜に触れやすく、口内炎や不快感につながるケースも見受けられます。
歯が動くときに生じる痛みの
医学的な仕組み
矯正治療による痛みや違和感は、歯が移動する際に起こる生体反応と密接に関係しています。歯の周囲には「歯根膜」と呼ばれる薄い組織が存在しており、噛む力を感知したり、歯を支えたりする役割を担っています。矯正装置によって歯に力が加わると、歯根膜が一時的に圧迫され、血流や細胞活動に変化が生じます。この変化により炎症性物質が局所的に放出され、鈍い痛みや圧迫感として知覚されることがあります。
この反応は異常なものではなく、歯を安全に移動させるために必要な生理的プロセスの一部と考えられています。痛みの強さや持続期間は、歯の移動量、歯列の状態、年齢、個人の痛みの感じやすさなど複数の要因によって左右されます。
矯正装置の種類による痛みの傾向
治療中の感覚は、使用する装置の特性によっても異なります。
- ワイヤー矯正
歯に継続的な力を加えるため、調整後数日間に噛みにくさや圧迫感を覚えることがあります。
また、ブラケットやワイヤーが口腔内に触れることで、粘膜に刺激が加わる場合もあります。
- マウスピース型矯正装置
歯を段階的に動かす設計のため、力の変化が比較的緩やかとされています。装置が薄く、取り外しが可能である点から、粘膜への物理的刺激が少ないことも特徴の一つです。
矯正力の強さと痛みの関係
矯正治療によって過度な力が加わると、歯根膜の血流が阻害され、歯の移動効率が低下するだけでなく、違和感が長引く原因になることがあります。そのため、治療計画では歯の移動量や方向を細かく設計し、組織の回復を妨げない範囲で力を調整することが重要です。
痛みの感じ方に影響する
個人差について
同じ矯正装置を使用していても、感じ方には大きな差があります。これは歯並びの状態だけでなく、次のような要素が影響するためです。
- 歯根の形態や
長さ - 歯周組織の
健康状態 - 過去の
歯科治療歴 - ストレスや
疲労の有無 - 噛み合わせの
バランス
特に、歯周組織に炎症がある場合や、食いしばり・歯ぎしりの習慣がある方では、刺激を強く感じやすくなる傾向があります。このため、治療開始前に口腔内の状態を正確に把握することが重要です。
まとめ
矯正治療中の違和感や痛みは、歯が少しずつ動く過程で歯根膜や周囲組織に刺激が加わることで生じる反応の一つです。多くの場合、治療の経過として見られるものですが、日常生活に支障が出るほどの痛みを無理に我慢する必要はありません。上下の歯で感じ方に差が出る理由や、装置ごとの特徴を理解したうえで治療方法を選ぶことで、治療中の負担を軽減しやすくなります。
埼京線「武蔵浦和」駅から徒歩3分のスカイ&ガーデンデンタルオフィスでは、歯や歯周組織への負担に配慮し、デイモンシステムによるワイヤー矯正やマウスピース型矯正装置(インビザライン)を用いた治療を行っています。インビザライン治療では、一定の症例実績に基づき「インビザライン・ダイヤモンドプロバイダー」の認定を受け、公式認定歯科医師が治療を担当しています。治療前には、装置の特性やリスク、治療中に起こり得る違和感について丁寧に説明し、患者様の不安やご希望に配慮した治療計画をご提案しています。矯正治療に不安がある方は、事前の相談を通じて十分に理解し、納得したうえで治療を進めることを推奨します。