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矯正ブログ BLOG

インプラントアンカー矯正(TAD)による難症例へのアプローチ


矯正治療では、歯を動かす力のかけ方や支え方が治療結果を左右します。これまでの治療では、歯を動かす際に他の歯を「支点」として利用するのが一般的でしたが、その歯まで意図せず動いてしまうアンカレッジロスが課題でした。この問題を解決するために登場したのがインプラントアンカー(TAD:Temporary Anchorage Device)です。
インプラントアンカーは小さなチタン製スクリューを顎の骨に固定し、歯ではなく骨を支点として利用する治療法です。この方法を用いることによって、歯を精密にコントロールできるようになり、抜歯を避けたい症例や噛み合わせの高さを調整する必要があるケースにも幅広く応用されています。

インプラントアンカーを用いた矯正治療の仕組み

インプラントアンカーは、直径1〜2mmほどの非常に小さなスクリューで、局所麻酔下で顎骨に埋め込みます。埋入自体は数分で完了し、痛みや腫れはほとんどありません。埋入後は、ブラケットやワイヤー矯正、マウスピース矯正と組み合わせて使用します。スクリューが骨に直接固定されることで、歯を動かす際に他の歯に負担をかけず、特定の歯を的確な方向に移動させることが可能になります。これが従来では難しかった治療計画を実現する大きな強みとなっています。

抜歯を避けたいケースでの活用

歯列矯正では、歯をきれいに並べるためのスペースが必要になります。そのため、歯の大きさに対して顎が小さい場合や叢生(歯並びのガタつき)が強い場合には、スペース確保のために抜歯を選択することがあります。しかし、歯を抜くことに抵抗を感じたり、口元が後退して見えることで顔の印象が変わることを気にして、抜歯をためらう方も少なくありません。

インプラントアンカーによる非抜歯矯正の可能性

インプラントアンカーを用いると、奥歯を後方(遠心方向)に移動させることで歯を並べるためのスペースを確保できます。従来は難しかった臼歯の後方移動を、インプラントアンカーを固定源として支えることで可能になります。たとえば軽度から中等度の叢生で、口元のバランスを保ちながら前歯を下げたい場合、TADを上顎臼歯部に設置し、奥歯を数ミリ後方へ移動させることができます。結果として、抜歯を行わずに自然な横顔のラインを維持しながら歯列を整えられます。

非抜歯治療のメリット
  • 抜歯に伴う外科的処置を回避できる
  • 顔貌への影響を可能な限り抑えられる
  • 治療後の安定性を保ちやすい

歯や顎の状態によっては抜歯が適している場合もあるため、事前の精密検査が重要です。

垂直的コントロールが必要な症例での活用

歯の前後方向だけでなく、上下方向の位置関係(垂直的コントロール)にも有効です。特に開咬や過蓋咬合など、咬合の高さに問題がある症例で大きな効果が期待できます。歯の上下的な位置は、噛み合わせだけでなく顔全体のバランスにも影響するため、とても重要です。

開咬(オープンバイト)の場合

開咬とは、奥歯を噛み合わせたときに前歯が閉じない状態です。このタイプでは、上顎の臼歯を「圧下(骨の方向に沈める)」することで、咬合平面を整え、前歯が自然に噛み合うように導く方法が有効です。インプラントアンカーを臼歯部に埋入して固定源とすることで、外科手術を行わずに開咬を改善できるケースがあります。

過蓋咬合(ディープバイト)の場合

過蓋咬合では、上下の前歯の重なりが深く、下の歯がほとんど見えない状態になります。インプラントアンカーを利用して前歯を圧下したり、奥歯を挺出(下方向に引き出す)したりすることで、咬合の高さを適切にコントロールできます。この調整によって、噛み合わせの機能的改善だけでなく、自然なスマイルラインの形成にもつながります。

治療を受ける前に知っていただきたいリスクと注意点

一般的な流れ

  1. 診査・診断
    口腔内の状況をCTやレントゲンで確認し、スクリューの設置位置を検討します。
  2. スクリューの埋入
    局所麻酔下で顎骨にスクリューを設置します。処置時間は数分~30分程度です。
  3. 装置の連結と力の調整
    ブラケットやマウスピースと併用して、歯に矯正の力をかけていきます。
  4. 経過観察
    スクリューの安定性や清掃状態を定期的に確認し、必要に応じて微調整を行います。

治療中におけるリスクと注意点

  • インプラントアンカーの周囲を清潔に保つことが欠かせません。
  • 硬い食べ物による過度な力を避けることが望まれます。
  • まれにスクリューが緩むことがありますが、その際は再設置で対応可能です。
  • 骨質や歯根の位置により、スクリュー設置が難しい場合もあります。

インプラントアンカーを活用した矯正は、精密な診断と経験に基づく技術が求められる治療法です。そのため、歯科医師による綿密な治療計画の立案と継続的なメンテナンスが欠かせません。

まとめ

インプラントアンカーは、これまで治療が難しかった症例に対しても、より的確に歯の移動を可能にする方法です。ただし、すべての症例に適用できるわけではなく、骨の状態や歯列の特徴を踏まえたうえで適応を判断する必要があります。矯正治療を検討する際は歯科医師と相談し、自分に合ったプランを立てることが大切です。

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